参加>【本】原発列島を行く
開発事業の経済効果や過疎防止効果についての研究を求めたい。
・自然環境フォーラム電子会議に登録された発言を、自然環境フォーラムが整形したものです。
・Interwayのボタンをクリックすると、@niftyのInterway経由でログインし、そのリストの先頭
発言に移動します(@niftyのIDが必要→いいわけ)。転載以降の議論の状況をお知りになりた
い場合などにご利用ください。なお、時間が経つと、このリンクは切れる場合があります。
- FENV MES(11):●自然と環境 未来への海図27・北極海 -
+-00526 2001/12/01 猫が好き♪ 参加>【本】原発列島を行く
- FENV MES(11):●自然と環境 未来への海図27・北極海 -
#00526 SDI00600 猫が好き♪ 参加>【本】原発列島を行く
(11) 01/12/01 22:05 00005へのコメント
なんでこの本が「核」スレッドじゃなくて「参加」スレッドなのかと思った
あなた、あなたの疑問は正しい。でも切り口はいろいろある。そういうわけで、
この本は「参加」のスレッドで紹介し、考察を加えます。
名指ししちゃうけど、べつにコメントを義務づけるわけでもないけど、おそ
らく山崎さんあたり言いたいことあると思うので、言いたいことがありレスす
る価値があると思ったらレスつけといて(=^_^;=)。
=====
【タイトル】 原発列島を行く
【サ ブ】
【シリーズ】 集英社新書
【著 者】 鎌田慧
【発 行】 集英社
【発行年月】 2001/11/21
【ページ数】 253ページ
【判 型】 新書版
【定 価】 700円+税
【ISBN】 ISBN4-08-720116-3
【種 別】 ドキュメンタリー/レポート
【分 野】 原子力・核問題
【目 次】 はじめに
第1章 中央に翻弄されつづける悲劇の村
青森県六ヶ所村
第2章 首都移転とともに進む“処分所研究”
岐阜県東濃地区
第3章 遅れてきた無謀に抵抗する漁民の心意気
山口県上関町
第4章 活断層発見に揺れる「諦めの感情」
島根県鹿島町
第5章 おこぼれにすがる原発中毒半島の悪習
福井県敦賀市
第6章 「金権力発電所」と闘いつづける“悪人たち”
愛媛県伊方町
第7章 カネに糸目をつけぬ国策会社への抵抗
青森県大間町
第8章 ハーブと塩と核のごみ
石川県珠洲市
第9章 ロケットの島にうごめく不穏な野望
鹿児島県馬毛島
第10章 臨界事故のあとにはじまった軌道修正
茨城県東海村
第11章 三〇年前からつづく電力の“秘密工作”
鹿児島県川内市
第12章 貧すれば鈍す赤字市魔の選択
青森県むつ市・東通村
第13章 世界最大の原発地帯に吹くカネの暴風
新潟県柏崎市・刈羽村
第14章 矛盾吹き出す原発銀座の未来
福島県双葉町・富岡町
第15章 進出を阻止したあとの住民のダメ押し
新潟県巻町
第16章 精神を荒廃させる“植民地”経営
北海道泊村
第17章 反発強まる地震地帯の原発増設
静岡県浜岡町
あとがき
原子力発電所の運転・建設状況
【コメント】
これ、鎌田さんの本なんだよなあ。ケナしちゃまずいのかもしれないんだよ
なあ。でもおれ、果敢にケナしちゃう。ひっじょーに食い足らなかった。
まあ、初出が、あの「週刊金曜日」だし、原発問題ビギナー向けの本なんだ
と割り切れば、こういう本があってもいいのかもしれない。でも、そろそろ、
このレベルでうろうろしててもしょーがないんじゃないかという気がする。
もちろん、もしかすると、おれがこれから書くようなデータがてんこ盛りの
本はすでにどこかにあるのかもしれないし、おれが不勉強なだけかもしれない。
その可能性は留保する(その場合はまぁ、識者の誰かがレスつけといて)。
しかしなんつうかこう、その路線でいくとしても、情緒的なレポート書き連
ねるだけでは終わらせずにそれなりにデータを盛り込むことは可能だろうと思
う。それに、そろそろ反原発派も、その手のことに力点を移していかないとま
ずいんではないでしょうか。
本書、基本的には、「原発や原子力施設が来ても、立地となった場所は幸せ
になれない」ということを、現地ルポを基本にまとめたものです。その主張の
根幹であるところの「原発や原子力施設が来ても、立地となった場所は幸せに
なれない」というものについては、同意します。
だけど、単純に聞き書きしただけでは、「ああ、そりゃどんな場合でも、幸
せになれなかったひとはいるだろうね」という話にしかなんないです。そして、
幸せになれなかったひとへのヒアリングだけでまとめるなら、そういう本は書
けます。取材費と時間さえあれば、おれにだって書けるぞ。
でも、「幸せになれなかったひとたち」のコメントをまとめてレポートにし
たとしても、もしかしたらほかに「幸せになれたひとたち」がいるのかもしれ
ないんです。それだけじゃ、「最初に結論ありき」の本なのか、それとも真実
のルポルタージュ(=^_^;=)なのか、読者にゃわかりません。
また、もしも「幸せになれなかったひとたち」が主流派であったとしても、
それはなんか特別な事情によるものかもしれなくて、他の地域に外挿できる資
料とはなりにくいように思うのです。
本書は、資料性の薄さから、結果として「情緒的なレポート」にとどまって
しまっていて、なんかいまひとつおれにとっては説得力に欠けていた。なんか
なあ。つまんなかったというか、インタレスティングじゃなかったというか、
率直なところ「だからどうしたの?」を一歩も出ていないって感じだったわけ
です。
*
さて、と。ここからが本題だ。
それが「原発」でも「リゾート施設」でも「捕鯨基地」でもなんでもいいん
ですけど、自然保護派が反対したくなるような僻地開発モノの多くは、「立地
となる場所の経済的繁栄につながる」ということを口実にしています。売り込
む側はそういう口実で売り込むし、誘致する側もそういう口実で誘致する。
しかし、多くの場合(*1)、それが「原発」でも「リゾート施設」でも「捕鯨
基地」でもなんでもいいんですけど、建設やらなんやらに伴って多少は建築業
者とかは潤うかもしれないが、それ以上の効果はもたらさないんですね。
*1 全く効果がない、とは言わない。「原発」と「捕鯨基地」については不
勉強にして潤ったという事例を知らないが、「リゾート施設」について
は多少は事例を知っている。たとえば木曽路の妻篭宿や会津往還の大内
宿なんかは、放置しておけば廃村になっても不思議はないようなところ
だったのが、それなりの戦略でリゾート化を目指した結果、観光地とし
てそこそこ潤っている(もちろんリゾートにしたって、宮崎のフェニッ
クスリゾートをはじめとするテーマパーク群や博覧会など、コケたもの
の方が多いように感じていますが)。
それが「原発」でも「リゾート施設」でも「捕鯨基地」でもなんでもいいん
ですが、その手の事業で現地が潤うためにはどういう条件が必要なのか。どの
ような条件を揃えないと潤えないのか。立地の結果が、実はどうなっているの
か。
そういう資料をきっちり揃えないと、「情緒的レポート」からは抜け出せな
い。逆に言えば、その手の資料をきっちり揃えて説明してくれればそれは反論
がしにくい、説得力のあるレポートになり得るのではないか。更には、そうい
う資料を伴ったレポートが存在してくれるなら、類似の開発事業に狙われてい
るところにいる開発反対派のみなさんへのエールにも、援護射撃にも、なるん
じゃないか。
おれは、そんなふうに思うのです。そして、そういう観点から、本書はとて
も食い足らなかった。
たとえば。ここから多少自画自賛がはいるんだが。
おれが前に作成した「捕鯨の町の未来のために〜捕鯨基地鮎川の現在・過去・
未来」とかなんとかいうレポートがある(ライターがタイトル覚えてないんで
はまずかろうが(=^_^;=)>おれ)。
この中でおれは、過去に捕鯨基地であった鮎川(宮城県牡鹿町の集落のひと
つ)と近隣の集落・市町村との人口推移比較などを行っている。
このレポートは結果として、「過疎に苦しむ町の再興のために、沿岸捕鯨の
復活が必要だ」とする主張に対する反論になっている。そして、たとえ沿岸捕
鯨の再開を許したとしても鮎川の過疎が解決されるはずはないし、鮎川の過疎
は捕鯨の禁止によるものではなくて日本社会がかかえる構造的な問題に基づく
ものである、と論証している。
つまるところが、「過疎に苦しむ町の再興のために、沿岸捕鯨の復活が必要
だ」という主張には根拠がないし、沿岸捕鯨を復活したとしても鮎川の過疎と
いう問題が解決するわきゃありませんよ、と述べているわけです。
このレポートを書くための調査は、乗り込み日を含めてたかだか3泊4日に
すぎない。また、根拠となった資料は地方自治体から提供を受けた資料がメイ
ンであり、このレポートに反論しようと思ったらその資料レベルから反論しな
くちゃならないような構造にしてある。
いままでのところ、おそらくは日本政府の命を受けたアラン・マクノウから
罵倒に近い反論があっただけで、内容に関してのちゃんとした反論はひとつと
して受けてません。反論できるわけがないクォリティなんだろうとおれは思っ
ていて、嬉しく感じておりますが。
同じレベルの分析は、それが「原発」であろうが、「リゾート開発」であろ
うが、できるんじゃないかと、おれは思っている。それも、さしたる苦労なく、
わりとかんたんにできることなんじゃないかと。
原発や原子力関連施設に関して言うのならば。
誘致して、それでその地方の雇用がどのくらい増えたのか。その地方の過疎
傾向がどの程度低減されたのか。あるいは、関連収入がどのように分配されて
いるのか。このあたりまでは、地方自治体が作成し公開している資料からひっ
ぱるだけで、かなりのことがわかるはずだ。
更に独自調査をやってもうちょっとつっこむなら、幸せになったひとと、不
幸になったひととが、どのような割合で存在しているのか。その、幸せや不幸
の具体的な内容は、どういうものなのか。そんな切り口も興味深いんじゃない
か。
なんかね。
そろそろ、「原発は、地域振興のために役に立たない」「リゾート開発は、
地域振興のために役に立たない」とかいう主張をするのなら、そのくらいまで
踏み込んでいい時期だと思う。そこまで踏み込んではじめて、さまざまな開発
事業の、その地域にとってのほんとの意味が見えてくるのではないかとも思う。
そして、そこまでやらないと、今現在さらされている開発の危機への反対す
る人々のパワーアップのための世論形成や、類似の開発に狙われている場所の
人々へのエールを送るという意味では、今以上の実効的な効果を持たないので
はないか、とも思う。
で、本書の評価です。食い足らなかった。
個人的には、そういうわけで、「ほれ、この開発は、こんなに役に立たない」
ということを明確につきつけてくれるような研究が行なわれることを祈りたい
と思うわけです。
全国各地で、それぞれの原発立地や原子力関連施設の立地について、あるい
はリゾート開発の立地について、はたまたダムをはじめとする多くの事業の立
地について、資料やデータを伴う詳細な分析が行なわれるなら、ずいぶんと日
本社会のありようは変わってくるのではないかと、ぼくは思うのです。そうい
う調査研究が、もっとたくさん、いろいろなところで行なわれるといいのだが、
と、ぼくは思いました。
【紹 介】 猫が好き♪(PEH01124@nifty.ne.jp, nekosuki@jca.apc.org)
<トップページに戻る>
|