書評・【本】「社会調査」のウソ
住民投票への無理解がてんこ盛りになっています。

・自然環境フォーラム電子会議に登録された発言を、自然環境フォーラムが整形したものです。

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- FENV  MES(16):※FreeTalk10  居酒屋鳥一 - 
+-08456  2000/11/30  猫が好き♪    【本】「社会調査」のウソ


- FENV MES(16):※FreeTalk10 居酒屋鳥一 - #08456 SDI00600 猫が好き♪ 【本】「社会調査」のウソ (16) 00/11/30 23:02 【タイトル】 「社会調査」のウソ 【サ  ブ】 リサーチ・リテラシーのすすめ 【シリーズ】 文春新書 【著  者】 谷岡一郎 【発  行】 文芸春秋 【発行年月】 平成12年(って西暦何年ですかあ?)6月20日初刷 【ページ数】 222p 【判  型】 新書版 【定  価】 690円+税 【ISBN】 ISBN4-16-660110-5 C0236 \690E 【種  別】 論説 【分  野】 社会 【目  次】 序章  豊かさ指数はなぜ失敗したか             「ゴミ」は「ゴミ」を呼ぶ?             豊かさ指数はなぜ失敗したか                第1章 「社会調査」はゴミがいっぱい             学者が生み出すゴミ             政府・官公庁が生み出すゴミ             社会運動グループが生み出すゴミ             マスコミが生み出すゴミ                第2章 調査とマスコミ〜ずさんなデータが記事になる理由             垂れ流されるゴミ             記事のための調査             印象操作のテクニック             チェック機関の必要性                第3章 研究者と調査             華麗なる学者の世界             ノーデータ、ノーペーパー             データを公開できぬわけ             学者の論文を格付けしよう                第4章 さまざまな「バイアス(偏向)」             人は忘れる、ウソをつく             「モデル構築」はバイアスの巣             見せかけの相関             リサーチ・デザインとは何か             視聴率の落とし穴             あくどい誘導的質問             サンプリングにおけるバイアス                第5章 リサーチ・リテラシーのすすめ             リサーチ・リテラシー教育の必要性             社会調査を減らすには             あなたのリサーチ・リテラシーをテストする                あとがき        主要参考文献 【コメント】  やー。立ち読みした段階ではもうちょっと面白そうな手応えがあったのだけ ど、読んでみたらクズ本だった(=^_^;=)。なんかなー。申しわけないんだども、 特定の政治観・特定の倫理観・特定の学問観に基づいて、気に入らないものを ばっさばっさとゴミ呼ばわりして切り捨てただけの本のように見えました。  ダメだこりゃ。 *  いや、まともなことも言ってはいるのね。調査をやる上での基礎的な知識に ついては、「まともな調査をやる場合」にでも、「牽強付会な調査をやる場合」 にでも充分に生かせる知識を得られます。そういう意味で、実用書として考え る分には、まあコンパクトにまとまっててよろしいでしょう。  しかしネタがなんせ社会調査です。あんまし数字をはっきりと出せるもので はないし、致命的なことに再現性が怪しいものだったりもします。だからいず れにせよ「ある調査の信頼性は、その調査の前提(設問とか)とセットにして はじめて判断できる」もののはずですが、「どうがんばっても、公平な前提を 設定できないような状況」での調査とかってのもあるわけです。  また、そもそも調査って事実を知るためにやるものとは限らないし、事実を 知りたいと思ったとしても人の数だけ事実があったりもする。  そういう現実をぶっとばして、自分が気に入らない調査について欠点をあげ つらいゴミよばわりしたって、何も始まらないでしょう。まあ、書いてて気分 は良かっただろうけど、読んでる側は極めて気分が悪かった。 *  具体的には、と。おれはまあいちおう市民運動系のひとらしいんで、そのあ たりの事例はある程度知ってるので、市民運動が出力しゴミよばわりされたも のを指摘します。ただ、おそらく他分野についても、同クラスの筋違いな非難 がてんこ盛りなんじゃないかと思います。 ・アムネスティ・インターナショナルの事例 (63p)  アムネスティが近畿地区で衆院選候補者に行った死刑に関する意識調査を罵 倒している。  この中で谷岡は、回答率の低さ(59%)などをあげつらい、特に自民党候補 者について、「記事で見る限り自民党候補者の回答者はたったの13人であるが、 自民党の候補者がこんなに少ないはずがない。アムネスティを相手に記名で死 刑制度に賛成する勇気がなかったものと思われるが、一概にはこれを非難でき ない(以下、アムネスティは反対者に苛烈な批判をする、云々)」などと書い てある。  あほか。  こういう調査の場合、結果として出された賛否の比率だけではなく、誰がど う回答したかというようなこともデータなんである。どちらかというと、回答 するとかしないとかいった行動の方が貴重なデータだったりもする。  そこらへんをぶっとばして、「賛否の比率にはあまり意味がない。だからこ の調査には意味がない。ゴミだ」なんて言ってても、そういう言辞こそゴミで はないのだろうか。 ・模擬投票の事例 (45p)  神戸空港・住民投票の会が行った自主管理住民投票の事例を罵倒している。  この中で谷岡は、投票結果では95%が神戸空港に反対していたということに ついて、以下のように述べている([]内評者注)。    はっきり申し上げるが、空港建設に市民の二十人に十九人が反対すると   いうような数字は単なるウソである。まともな大人なら、それが真実では   ないこと(市民の実態を表していないこと)ぐらいすぐにわかる。団体の   代表が望都国立大学の学長かどうかに関係なく、そんな調査はゴミであり、   そのようなゴミを作り、しかも直接 [市長に] 手渡すために職員ともめる   ようなグループの代表者に、国立大の名誉教授として税金から給料を出す   のはやめてもらいたい。  もう言いたい放題と言っていいだろう(ちなみに、著者の谷岡一郎氏は、大 阪商業大学の学長らしいんですが、もしかして大阪商大って私立大だったりし ます? そんだったらここらへんって、単なるコンプレックスの表明として、 ほほえましく見てあげるべきなのかもしれないと思うのだが(=^_^;=))。  実際には、この手の自主管理住民投票は、調査のために行なわれるものでは ない。民意調査のために行うのならばちゃんとした住民投票をやるべきだが、 なんせちゃんとした調査をやりたがらない人々がたくさんいるので、その代替 として行なわれるキャンペーンが自主管理住民投票なんで。  そういう性格のものに「学術的調査」の基準をあてはめてゴミ呼ばわりされ たって、そんなもん知らんです。ゴミ呼ばわりする方がコンテクストをわきま えない大馬鹿者だということにならんのだろうか。  更に、その流れでこんなコトも言っている (48p)。    だいたいこうした模擬投票というのは調査対象者(投票者)がムチャク   チャである。(主催者にその気がなくても)わざわざ政治臭がプンプンす   る投票にやって来る者(もしくはやって来ない者)は、概して特定の思想   を持っている場合が多い。  これは、調査の対象者が歪んでいて(サンプリングに問題があって)「だか ら自主管理住民投票になんざ意味がない」と言いたいらしいのだが、アムネス ティの項目で述べたこととも重なるけれども、誰が投票し誰が投票しないかと いったこともまた、世論を推し量る上で重要なデータとなるということを、彼 は知らないのだろうか。  実際には、「可能な限りきっちりとした世論調査」となるはずだった吉野川 稼動堰をめぐる、徳島市による住民投票でも、推進派による投票ボイコット騒 動があり、世論調査という意味でのサンプリングには重大な問題が生じた。し かし、投票というのは、「投票した者だけの結論を、全員の結論と看做す」と いう擬制の上に成り立っているものであり、その投票がどのようなものであっ たかということの説明がちゃんとなされている限り、投票結果のデータは、そ れはそれで厳然たる調査結果なのである。  もちろん、選挙なども含めて、「それが常に、世論の動向を正確に反映して いる」と言うことはができない、という限界はある。しかしそれは、投票調査 の精度問題とは別の論点だ。  もう一発 (167p)。    沖縄県では、翌年、名護市で、普天間基地の代替ヘリポートに関する市   民投票が行なわれたが、その時の回答肢は、「賛成」(2562票)、「環境対   策や経済効果が期待できるので賛成」(11705票)、「反対」(16254票)、「   環境対策や経済効果が期待できないので反対」(385票)の四通りであった。      (中略〜この4択の選択肢の出来の悪さについての解説)       このような二重質問が用いられたのは、おそらく基地に反対する知事(   太田昌秀)の意思が介入していることと関係があるだろう。この手法は共   産主義国ソビエトが、崩壊寸前の1991年に行った国民投票で使った手法と   よく似ていることを指摘しておきたい。  最初の「賛成」「反対」というシンプルな選択肢が、このわけわからない4 択に化けた理由をご存知ないのであろう。どちらかというと太田知事とは政見 を異にする側が持ち出したややこしい選択肢の責任を、太田知事に押し付ける というのは、事実誤認である。調べもしないでンなこと言われてもなー。たぶ ん他の事例についても、同程度にしか調べておらず、あちこちに同程度の間違 いがちりばめられているのでありましょう。 *  現実問題、社会調査にはかなり問題が大きいものがまざっており、どこから つついても問題がみつからないような調査は極めて少ないのが実情です。ある 意味、「まあまあ許せるもの」と「問題外のもの」の2種類しかない、と言っ ても過言ではないと思います。そして、それはかなり困った状況であると、お れも思います。  実はおれがこの本を手に取ったのは、とある自然保護団体がやらかした、ろ くでもない調査のことを、タイトルを見た瞬間に思い出したから(*1)。で、目 次をめくったら、「社会運動グループ」由来の社会調査についても取り上げら れているようだったので、ぱらぱらめくって買うことにしたのでした。  *1 どういう事例だったかというと、「消費者は完全ノンフロン冷蔵庫を求    めているかどうか」についての調査として発表されたもので、90%だっ    たかなんかという数字が提示されていた。数字を見た瞬間に「何か操作    をしたな」と思ったので調べてみたら、フロン問題に関するイベントに    来たひとに対して行った調査で(=^_^;=)。それなら90%くらいの数字は    叩き出せるだろうけどな、しかしそれにどういう意味があるんだ。    えー、それを発表した団体も団体ですが、報じたマスコミもいい根性し    てると思いましたぁ(=^_^;=)。  おれが求めていたのは、「まあまあ許せるもの、と、問題外のもの、との見 分け方」だったし、あるいは自分が調査主体になる場合に「いかにして調査を 問題外のものとはしないで、まあまあ許せるものにとどめるかという知識」だ ったりしたわけです。  でも、実際にはこの本はそういう局面では全く役に立たないものでした。  わかったことは、「前提条件やコンテクストをとっぱらってから言うなら、 何に対してでも偉そうに罵倒をなげかけることはできる」ということくらいに すぎませんでした。でも、そのくらいのことはおれはよく知っているし、今さ ら教えてもらわんでも(=^_^;=)。  なんつうかねえ。狙い目は面白かったと思うのだが、しかし出来上がりは、 ひとことで言うなら「どっしょーもない」。  世の中の幾多の社会調査を果敢に「クズ」と呼び、「クズを減らせ」と叫ぶ 著者が、しかしその主張の中でこんなクズ本を世に出してしまってていいんで しょうか。自省せよ自省、と、690円+税という大損害を受けてしまった猫♪は 力なくつぶやくのでした。 【紹  介】  猫が好き♪ PEH01124@nifty.ne.jp, nekosuki@jca.apc.org
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